フランス海軍 (Part 0)

 「海軍」という言葉を聞いて皆さんが思い浮かべるのはどこの国でしょうか?2度の世界大戦を通じて大国の地位を確固たるものとし、冷戦終結後の現在、世界最大の戦力を保有するアメリカ?それともかつて世界第3位の海軍戦力を有し、現在もアジア有数の艦隊を維持している日本?また、冷戦の時代に生きていた方々はソ連(ロシア)のイメージも大きいかもしれません。人によっては現在驚くべきスピードで艦隊の増強を推し進めている中国も出てくるでしょうか。

 このような質問をしておいて申し訳ないのですが、今日の記事、というより今後このブログに出てくる国は上記のような国々ではありません。今回は西ヨーロッパに位置し、国土が不規則な六角形をした革命とワインの国、フランスのお話です。

 

 フランスはドイツやロシアと同じ大陸国家です。保有している軍隊も昔から陸主海従で、フランス陸軍はフランスの長い歴史の中で国土の防衛と周辺諸国への侵攻に大いに活躍しました。ナポレオン戦争におけるナポレオンの活躍と第1次世界大戦におけるマルヌ、ヴェルダンの戦いなどはフランス人の中では今も印象深いものがあるでしょう。

 一方、海軍はどうでしょうか?フランスはかつて本土の20倍近い面積の植民地を保有していましたが、それらを維持することができたのは海軍の功績です。また、石油や鉱物など輸入量の60%を海上輸送に頼っているフランスにとって、海路の保護は非常に重要で、当然ですがそれが可能なのは海軍しかいません。

 これだけ見れば、海軍はフランスの国家戦略上、非常に重要な役割を担っていると考えられますが、フランスでは長い間、政府からも国民からもそのようには認識されておらず、少なくとも戦後の混乱を経て第五共和政が成立し、ドゴール大統領のもとで潜水艦を含む核兵器の戦力化が成されるまで、海軍は国防を担う重要な柱とは認識されていなかったような印象を受けます。何故でしょうか?

 これに対する回答としては先ほど述べた通り、フランスがそもそも大陸国家であり、何百年以上にも渡って陸軍の力によって国家を存続させてきた偉大な陸軍国だったためです。20世紀に入ってから行われた、フランスにとって最も過酷だった2つの戦争は同国にとっては地上領域の戦争でしかなく、自分たちの努力とは関係なしに陸軍の勝敗の結果で存続か、滅亡かという未来が決まってしまうのがフランス海軍でした。

 さて、前置きが長くなりましたが次回からフランス海軍の艦艇や開発経緯など具体的な話を書きたいと思います。ただ、フランス海軍について書くと言っても、フランス海軍の歴史は17世紀から現在まで続いており、すべてを網羅するなど不可能ですので、私が最も興味のある戦間期(1919~1939)に絞り、戦勝国の一員として1918年に第1次世界大戦の終結を迎えたものの、国土と国民に甚大な被害を受けたフランスが戦後どのような形で海軍を整備し、2度目の悲惨な大戦を迎えたのか?自分用のまとめという形で書いていきたいと思います。

 ではでは。